

「お母さんの子守唄」
広島市の近くに大きくて古い木が一本あります。
長年を通してその木はたくさんの出来事を見てきました。
ある夏の夜、その木は、一人のお母さんが女の子に歌ってあげている子守唄を聞きました。
とても幸せそうで心地い音でした。
でも、木は、悲しい出来事を思い出してしました。
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(木の語り)
そう、それは80年前のこと。
わたしはあの夜に同じ子守唄を聞いたのです。
その日の朝、大きな爆弾が広島市に落ちました。
たくさんの人の命が失われ、傷つけられました。火傷を負った人たちが至る所にいました。
私はとても悲しかった・・・。
すごく暑い日で、わたしのそばで倒れていた人も何人かいた。
わたしは彼らに『こっちにきて木陰で休みなさい』と言い、彼らはすぐにわたしの元に来ました。
夜になり、すでに何人かの人たちは死んでしまいました。
ふと、ある、力のない声を聞きました。
それは子守唄。
女の子が小さな男の子に歌ってあげている子守唄でした。
「お母ちゃん、お母ちゃん」とその小さな男の子は泣いてました。
「泣かないで」と女の子は言いました。「お母さんならここにいるよ」と言い、また歌いはじめました。
彼女はとても弱っていましたが、死にそうな小さな男の子のために、お母さんになってみました。
腕に男の子を抱いて、本当のお母さんのようになってみたのです。
「お母ちゃん」と男の子はまだ泣いていました。
「いい子ね」と女の子は言い「大丈夫よ」と、もっとしっかりと腕に抱いて、また歌いはじめました。
しばらくしたら、男の子は泣き止み、静まりかえりました。
死んでしまったのです。
でも、〝小さなお母さん〟は歌い止みません。
それは、悲しい子守唄。
女の子の声はだんだん弱くなりました。
太陽が昇るころ、女の子はもう二度と動くことはありませんでした。
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Japanese translation:Nami Miyashita/
訳(全文):宮下奈美
二度とこのような悲しい出来事が起きないよう
子どもたちが生きる未来が、幸せであるよう祈って
2021年8月6日 広島 原爆投下から76年
核兵器のない世界を