あらたなメディアとの関わり
コロナ禍の子どものメディア依存と健康被害
2008年以降、スマートフォンやタブレット端末が急速に普及し、子どもだけで何時でも何処でも無制限にインターネットに接続できるようになりました。
ICTの普及は社会生活全般の利便性を高め、教育や医療においても革新的なツールとして有効活用される一方で、子ども社会においても、遊びや人間関係、生活習慣の点で大きな変化をもたらしました。
ICT・スマートフォン等の問題について子どもへの弊害として日本小児連絡協議会「子どもとICT 〜子どもたちの健やかな成長を願って〜」委員会は以下の重要な提言を発表しています。
◆親子の絆から始まる人間と人間との絆の形成に影響を与え、実社会での体験の機会を奪って、健やかな成長発達や社会性の形成を妨げることは極めて大きな問題であること。
◆子どものネット依存も深刻化しており、ICTの適正利用は子どもの健やかな成長発達にとって、解決すべき重要課題となっている。
更には、子ども達を取り巻くこの様なICT環境は利点と問題点を持った両刃の剣であり、短時間で゙膨大なデータのやり取りが可能となった反面、子ども達がインターネット上のいじめや犯罪の加害者、または被害者になったり、ネット依存に起因した様々な心身の健康障害が生じたり、人間としての健やかな成長発達が妨げられるなど見過ごすことのできない多様で゙深刻な問題が明らかになりました。
心身への健康被害
特に、子どもがネットに関わることで生じやすい健康被害等が同協議会(委員会)から発表されています。
1つに、情報管理が十分にできないこと
2つに、 日常生活リズムの障害が生じやすいこと、端的に言うと使用時間が長くなり睡眠不足に起因する健康障害が生じやすいこと
3つに、親子の絆や実体験不足により社会性の獲得の機会が欠如する危険性
4つに、一般的に子ども達はスマホなどを購入し、維持管理する経済能力がないこと
この4点を、提言として述べています。
しかし現実には、コロナ禍において3ヶ月にも及ぶ学校の休校、外出や外遊びもままならない自粛要請の結果、発達期の子ども達はヒトがヒトになるうえで最も肝心な「人とふれあうこと」「人と手をつなぐこと」「人と語り合うこと」を奪われてしまい、学校に行けず、家にだけいなければならない状態におかれた生活で、爆発的に増えたのが「スクリーンタイム」です。子どもたちは家の中でゲームはもちろんのこと、他にも様々な動画やSNSへの接触の時間を大きく増やしました。
そしてスクリーンタイムの増加のもうひとつの要因が休校の補填措置としての「オンライン授業」や「ネット配信授業」です。子どもたちの学びをなんとか保障したいという大人たちの願いもあって、新聞やテレビでも大きく報道されました。しかし、ネット配信授業などに対する教職員の経験不足や各家庭のICT環境整備のバラツキなどもあって、学校教育の代替え機能を果たすどころか「教育格差」の拡大という副作用が目立つ結果となったことを「NPO子どもとメディア」が指摘しています。
GIGAスクール構想の課題と検討
このような状況をふまえて2020年度、子どもとメディアについて取り組むべき課題は「GIGAスクール構想」への対応です。学校現場にしてみればコロナ休校への対応に追われる最中に突然降ってきた課題で、教職員の研修や児童・生徒へのネットリテラシー教育など問題は山積みです。
成長段階の子どもが大人と同じように、もしくはそれ以上にメディア機器に触れることにより、睡眠不足や視力の低下、特に眼科医が心配しているのは眼の球が中央に寄って戻らない、いわゆる「寄り眼」状態になる「急性内斜視」の増加です。他に脳機能への影響やコミュニケーション能力についてなど、健康被害への問題を同時に考え、心身ともに子どもたちの健康を守っていくことが今問われています。本来ならば、国が政策を考えていくべき課題だと言えますがそこまでできていません。
蕨市では
本市はこれまでアウトメディア宣言を行い、メディアが子どもたちへ及ぼす健康被害について、自らが考えて政策を打ち出す等の様々な取り組みを行ってきました。しかし、これまでは「メディアに関わる時間をいかに工夫するか」についてです。今後は子ども自身が健康被害を含めどのようにメディアと向き合っていくのか、あらたなテーマとして考えていかなければなりません。
わたしは9月市議会の一般質問で、これまでのアウトメディアという取組にサブタイトルをつけたり、授業の中で健康被害を含むあらたな取り組みの必要性について、未来を生きる子どもたちの将来が健康であることを願いつつ9月市議会で問題提起をしました。
本市の教育委員会もその重要性を認識しており、前向きに取り組む姿勢を示しました。